3.RFID読取りエラー対策
(特許第5348243号)
(米国特許庁登録 13/271,602)
以上述べたように、電磁波を照射して無線タグの固有情報を読み取る場合には、読み取れなかった場合のエラー処理を考慮したシステム設計をしなくてはなりません。もし読取りエラーが発生した場合、先ず読み取れなかった無線タグがあったという「事実」を、確実迅速に通知し、次にどの無線タグが読み取れなかったのかを特定する必要があります。
ラックに50本の医療用採血管が収納されている場合を考えます。電磁波による読取りでは、49本しか検出されなかったとします。しかし、物理的(上述したレーザーダイオードや探針等のセンサ)手段で計数した数値は、50本となります。一括読取りシステムでは、双方の計数を照合した結果、合わなかった場合には、即時にエラーを通知します。その後、問題になるのは、ラック内のどの採血管に貼付された無線タグが反応しなかったのかを特定することです。
読取り欠損を検出した場合、最初に行うことは、再度ラック全体の無線タグを一括読取りするという操作です。これを数回繰り返しても、物理的手段で検出した採血管本数と電磁波で読み取った採血管本数とが照合しない場合、無線タグの破損が考えられます。
エラーを起こしている無線タグをラック内から特定する手段としては、下記の3つの方法が考えられます。
(1) ラック本体を電波暗室のようなエリアに設置し、ラックに格納された採血管を1本ずつ順番に自動的に取りだして電波照射領域にセットし、無線タグ情報を読み取るという方法です。50本の採血管が格納されているラックでは、この操作を50回行うことになります。不良の無線タグが貼付された採血管が取り出された場合には、電波照射領域にセットしても、無線タグは反応しません。この時、同時に取り出した採血管のラック内部での位置情報を取得することで、どこに格納した採血管が読み取れなかったのかが判ります。
(2) 採血管一括読取り装置のアンテナから照射する電磁波の強度、位相を、ソフトウエア的に制御することで、読取り電磁波の干渉を発生させ、読取り電磁波が強いスポットを意図的に作ります。このスポットの位置を移動させることで、ラックに格納されている特定の位置の採血管に貼付された無線タグの固有情報のみを読み取って行きます。読み取れない場合には、無線タグの欠損と判定します。また、無線タグ読取りアンテナの前面に、ラック1列分のスリットを設ける場合も考えられます。ラックの縦方向と横方向に、スリット付きのアンテナを配置することで、読取り電磁波を行方向、列方向の2方向に照射します。この操作を行列分だけ繰り返し、読取り結果をデータベースに保存した後で、ソフトウエア処理を行うことで、ラックの各位置に格納されている無線タグの固有情報をマッピングすることができます。
(3) ラックの上面もしくは底面から、電磁波照射強度が比較的小さいワンパッチのアンテナを用いて電磁波を照射します。パッチアンテナの位置は、ラックの行列に沿って、自動的に移動できるように設定します。各位置で読み取ることができる無線タグの固有情報を、全てデータベース状にマッピングします。このデータを元に、ソフトウエア処理を行って、ラックの各位置に格納されている無線タグの固有情報を特定します。無線タグに欠損がある場合には、それが格納されているラック内の位置から情報を読み取ることが出来ません。
以上示したように、読取りエラーを起こした採血管の位置を特定するということは、同時にラック内部での各採血管の位置情報を取得する、ということにもなります。(続きを読む)