搬送機能付一括読取装置

 

1.装置の概要

現在、医療検体物流で大きな問題となっていることは、検体検査会社での検体着認作業です。検体検査会社には、各病院や診療所から収集された医療用検体が、毎日決まった時刻に到着します。現在、到着した検体の着認処理は、ラックから検体容器を1本ずつ抜きとってから容器に貼付されているバーコードを読み取り、それをまたラックに戻すという手作業で行っています。

このような作業では、短時間で多くの医療検体着認作業を行うことが難しい上に、手作業によるミスも発生する可能性があります。

ここにご紹介するデモ装置は、自動搬送機能を備えた検体容器貼付RFID一括読み取り装置です。検体検査会社の着認窓口では、ラックをその都度、アンテナが内蔵された専用の台に置いてタグ情報を読み取るという方式は現実的ではありません。ゲート状のアンテナの間にラックを順次通過させて行くという方式を採用するほうが、遥かに効率的です。本装置は、50本ラック2個分、合計100本の検体容器を、自動搬送システムを用いてRFID読み取りアンテナの間を通過させ、タグ情報を一括読み取りするものです。

ここで重要になってくるのは、タグ情報を全数正確に読み取ることができたかどうかということです。従来の一括読み取り装置では、この点の対応が十分になされておりませんでした。本デモ装置は、自動搬送されてきたラックに格納されている検体容器の個数を、電磁波によるタグ情報の読み取りとは別の手段(物理的検出手段)で検出し、リアルタイムで両者を突合することにより、読み取りミスの発生を瞬時に検知する機能を備えております。

(特許第5348243号) (米国特許庁登録 13/271,602)

今回試作を行った自動搬送機能付き採血管一括読取り装置では、50本ラック✕2個の、総計100本の採血管を一括読み取りできるように設計されています。ラックは専用のトレイに置かれ、移動はトレイ両側のベルトにより行います。トレイの位置検出、動作、停止等は、全て自動的に行われるように設計されています。

 

2.装置の新機能

ラックに格納されたRFID貼付の採血管は、一括読み取りを行っただけでは完全ではありません。なぜなら、極めて信頼性の高い「スキャン読取り方式」(対象とアンテナとの相対位置を動かしながら読み取る方式)を採用しているとは言え、電磁波による読み取り時にエラーが発生している可能性があるからです。例えば、50本入りのラックに50本の採血管が格納されている状態ならば、ラックに何本採血管が入っているのか目視ですぐに判ります。しかし、34本や47本といった中途半端な数ですと、電磁波で全てのタグ情報を読み取れたかどうかが、即座には判りません。

そこで、本デモ装置では、電磁波による読み取りとは別に、物理的な手段を用いてラックに実際に格納されている採血管の本数を計数する仕組みが入っています。装置にラックを通すと、先ず物理的な手段でラックに格納されている採血管の数を計数し、次に電磁波による一括読み取りで各タグ情報を取得します。両者が検出した採血管の本数が異なる場合、何らかの読み取りエラーが発生したことを瞬時に検知することが可能です。

本デモ装置では、物理的な本数検出方法として、レーザーダイオードによるセンサを列毎にスキャンする手段を採用しましたが、他にもプローブによる検出やカメラ画像解析による検出等、さまざまな方法が考えられます。(特許第5348243号)および(米国特許庁登録 13/271,602)では、本数検出の手段として、物理的なもの、超音波を使用したもの、レーザーを使用したもの、画像認識を使用したもの等、あらゆる手段について記載しております。

 

自動搬送装置の上部に設けられた、採血管本数計数用のレーザーダイオード群。ラック1列分のセンサーを直線上に並べ、ラックの列ピッチで移動させて、各格納領域に採血管が入っているかどうかを検出します。ラック内に長さの異なる採血管が混在しても、正確に計数することが可能です。(特許第5348243号)および(米国特許庁登録 13/271,602)

 

3.装置の動作

このデモ装置では、専用トレイに載せたラック2台分の真空採血管を順次読み取り、その結果を出力するように設計しました。内部は循環式になっており、3組のトレイの内容を繰り返し読み取るようになっています。循環式の自動搬送にした理由は、長時間連続読取り時のエラー発生率の検証および、本特許の実施例のデモを行うのに適しているからです。読み取りは、電磁波によるタグ情報の他に、物理的手段による容器本数の検出も行い、両者の本数をディスプレイに表示し、一致しなかった場合にはエラーを出力してログに記録します。

実際に現場で使用する際は、このような循環式では無く、一方通行のゲートのような設置になります。トレーに採血管ラックを置くと、自動的に搬送されて読み取るような装置が、検体検査会社の着認処理に適していると言えます。(続きを読む)

 

ラックに格納された真空採血管の本数を物理的に計数するために設けたレーザーダイオードセンサーの動作です。

ラックに格納された真空採血管の本数を物理的に計数するために設けたレーザーダイオードセンサーの動画です。100本入りの採血管ラックの中に83本の採血管を入れた時の動作例です。読み取り結果表示に採血管本数が正しく表示されているのが判ります。

デモ機の動作情況です。この装置は2009年11月に開催された「メディ カルクリエーションふくしま2009」で展示されました。

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