RFID採血管の一括読取り

 

1.RFIDを用いた医療用採血管の一括読取り
 (特許第4727404号

当社では、複数の密集する容器それぞれに貼付された無線タグ(RFID)の固有情報を、一括して読み取るための技術を開発しました。これは、「読取り装置と物品管理システム(特許第4727404号)」として特許査定を受けております。ここで容器とは、医療用採血管でも採血バックでも、その他容器一般とみなせるものであれば種類を問いません。

UHF帯の無線タグ(RFID)が利用できるようになり、それまでの13.56MHz無線タグや、2.45GHz帯無線タグでは実現できなかったことが可能になってまいりました。しかし、ラックに密集して収納された多数の採血管に貼付された無線タグの固有情報を、一度に一括して全て読み取るには技術的なノウハウが必要になります。

当社では、「複数の無線タグを100%確実に全数読み取ることが可能である」とは断言いたしません。無線タグは電磁波を使用するため、使用環境や無線タグの貼付状態、さらには無線タグと読取りアンテナとの相対位置や方向、近傍の電波吸収物の有無などにより、読取り精度が異なるからです。しかし、100%の読取りは原理的に不可能にしても、読取りエラーを限りなく少なくすることは可能です。

当社は、特許「読取り装置と物品管理システム(特許第4727404号)」として出願した技術である「スキャン読取り方式」を用いることにより、読取りエラーを従来と比較して格段に少なくすることを可能にしました。この技術に基づいて試作した「採血管一括読取り装置」では、当初50本の採血管一括読取りからスタートし、100本、200本の一括読取りまで可能であることを実証しています。試作機を用いた実験では、100本の採血管に貼付されたRFIDタグ100枚を読み込むのに要する時間は、1秒以下を実現しています。

ラックに収納した採血管に貼付された無線タグの固有情報を一括して読み取る際、アンテナを動かす、試験管ラックを動かす、もしくはその両方を動かすという、3つの方法が考えられます。本特許では、そのいずれの場合も含んでおります。さらに、試験管ラックやアンテナを動かす手段についても限定していません。即ち、モーターを使用しても良いですし、手で動かしても構いません。逆に、ラックもアンテナも固定しておき、ラックの周囲に複数のアンテナを配置して、それぞれのアンテナから照射する電磁波を電子的に切りかえることで、一括読取りを行うという方法もあります。これは、次の2項で解説します。

ラックに収納した医療用採血管の一括読取りでは、全てのタグ情報を確実に読み取るため、一括読取り装置の照射電磁波を調整することも重要ですが、それ以上に大切な点は、以下の2つです。

  • 一括読取りを行った医療用採血管の本数を、電磁波以外の方法で確認し、電磁波で読み取った本数と照合する
  • 読取りエラーが発生したことを確実に検知する

以上2つの点については、次項以降で解説します。(続きを読む)

特許「読取り装置と物品管理システム(特許第4727404号)」の実施例。医療用採血管一括読取り装置の構造を示しています。この例では、ラックを移動させる方法を図示していますが、アンテナを移動させても、その両方を移動させても構いません。
特許「読取り装置と物品管理システム(特許第4727404号)」の実施例。医療用採血管一括読取り装置を使った物品管理方法を示しています。一括読取り装置はネットワークを介して管理サーバに接続され、読取り結果はリアルタイムでサーバ上のデータベースに蓄積されます。
特許「読取り装置と物品管理システム(特許第4727404号)」をベースに試作を行った、医療用採血管一括読取り装置。この試作では、100本の真空採血管それぞれに貼付されている無線タグ(RFID)の情報を、一括で読み取ることができます。読取り時間は1秒以下を達成しており、読取り精度も限りなく100%に近づけています。しかし電磁波を使用している以上、100%確実に読み取ると言い切ることは、原理的にできません。そこで、採血管の実本数の取得と、読取りエラー発生を検知するシステムが重要になってきます。

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