概要

 

0.はじめに

現在、日本国内では年間約10~15億本の医療用真空採血管が用いられています。そして、これらの採血管の管理は、主として「バーコード」を印刷したシールを貼ることで行なわれてきました。

医療用採血管をバーコードで管理する際の問題点は、以前より指摘されてきました。主なものは下記の通りです。

  • バーコードは1本ずつ読み取らなくてはならない
  • バーコードに汚れが付着すると、正常に読み取ることができない
  • 採血管を冷凍保存すると、霜が付着しバーコードが読めなくなることがある
  • 採血管を冷凍保存すると、温度変化によりバーコードの一部が剥がれてしまう

以上のうち、最も重要な問題点は、「バーコードの読取りは1本ずつ行う」ということです。即ち、多数の医療用採血管を一度に取り扱う場合には、手で1本ずつ採血管を取り上げて、バーコードを読み取るという作業の繰り返しが必要となります。

この方法では、医療機関から検体検査機関に検査を依頼する際や、検体検査機関が医療機関の検体を受けとる(これを着認処理と言います)際に、多大な人的工数が発生します。また、ヒューマンエラーによる読取り漏れや検体の紛失が起こる可能性を排除できません。

医療検体物流の観点から見た場合、バーコードによる管理では、多数の検体をひとつずつ読み取る作業に稼働がかかるため、検体搬送における要所要所のポイントで、きめ細かく検体情報の読み取りを行うことは困難です。このため完全な物流トレーサビリティーを確立できていないのが実態です。

以上の点を考慮し、当社では2005年より、医療用採血管に無線タグ(RFID)を貼付することによる一括読取り管理方法を検討し、これに関する複数の特許を権利化しております。バーコードによる管理を無線タグ(RFID)に変更することで、医療用採血管はもとより、採血バッグ、点滴バッグ、生培地、病理検体、希少疾病用医薬品の管理といった様々な分野で、より安全性と信頼性が高いシステムを構築することが可能となります。(続きを読む)

 

従来のバーコードラベル貼付の医療用真空採血管(上)と、無線タグ(RFID)貼付の医療用真空採血管(下)。バーコードラベルの内側に無線タグを埋めこむ形で、両方の機能が使えるようにすることも可能です。
試験管ラックに収納した無線タグ(RFID)貼付済みの医療用真空採血管。この状態でアンテナの前を通過させることにより、総ての採血管に貼付されている無線タグ(RFID)の固有情報を、一括して一度に読み取ることが可能となります。従来のバーコードシステムでは、採血管を1本ずつ取り出して、バーコードリーダーで読み取るという作業が必要でした。

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