1.実験の概要
今まで行われた実証実験で、低温保存検体のRFID一括読み取りは問題無く行えることが判りました。しかし、実際の検体(血液・血漿等)の入った容器にRFIDを貼付して読取れるかどうかのテストも行う必要があります。
今回の実験では、某検体会社様のご協力を得て、廃棄検体にRFIDを貼付し、正常に読み取ることができるかどうかを検証しました。検体検査機関では、さまざまなラック、容器が用いられています。また遠心分離機にかけるケースも数多く見受けられます。この実験では、RFID貼付の実検体容器を冷凍保存したものや、ラックごと遠心分離機にかけたものの読み取り試験も行いました。
※本実験は、某検体会社様研究所に於いて実施されました。
2.実験結果
実検体にRFIDを貼付した容器でも、複数密集した状態で一括読み取りできることを確認しました。容器の中には、電磁波を吸収しやすい実際の血液が入っていますが、模擬血液の場合と比較して読み取り精度は落ちません。
また、凍結保存した検体のラック一括読み取りも正常に行えました。ラックを遠心分離機にかけた後でも、RFIDの破損等はありませんでした。
3.電磁波漏洩対策
実際の現場では、今回用いたようなRFID貼付真空採血管一括読み取り装置を、複数台使用することも考えられます。また、一括読み取り装置の近傍に、本来読み取り対象では無い真空採血管が置いてある場合もあります。このような場合、一括読み取り装置が他の装置と干渉したり、装置周辺に置かれた真空採血管を読み取ってしまうと、正確性が損なわれます。
そのための実験として、一括読み取り装置の外側を、アルミホイルで覆う対策を施しました。これにより、装置近傍に置かれているRFID貼付の真空採血管を誤って読み取ってしまうことを防止することができました。
今回使用したデモセットでは、電磁波漏洩対策を施していないケースに納められていますが、検証実験で効果が見られたように、読み取る範囲だけをアルミ膜のような電磁波吸収素材で囲うことで、簡単に対応できることが実証されました。
ラックに格納された真空採血管10本を、ラックに入れたままを遠心分離機にかけます。その後、一括読み取り装置で問題無く読み取ることができるかどうかのテストです。遠心分離機にかけてもタグの故障は発生せず、10本総てが正常に読み取れています。
ガンベルトと呼ばれる検体ホルダーに10本の採血管を入れ、ロール状に巻き輪ゴムで固定したものを一括読み取り装置で読み取る実験です。問題無く全数読み取ることができています。
ゴムバンドで束ねた採血管5本を、ビニール袋に入れた状態で、一括読み取りを行いました。着認現場では、このような状態で送られてくるものも多いためです。結果は問題無く全てを読み取ることができました。
ゴムバンドで束ねた採血管5本を、今度はアルミホイルで包みました。これで電磁波を遮蔽することができます。簡単な包装で、一括読み取り装置に反応させないようにすることが可能です。読みたく無い検体容器は、アルミ箔で覆われた箱の中に入れておくだけで、読み取りの対象外とすることができます。
ゴムバンドで束ねた採血管5本、ビニール袋で包み、紙製のカップに入れた状態で一括読み取りを行うテストです。検体着認現場では、このような形で搬送されてくる検体も多いのです。結果は、全く問題無く全数読み取ることができました。
ラックに入れた25本の検体を、一括読み取り装置内に設置して、25本のタグ情報を読み取ります。次に、アルミホイルで簡易的な電磁遮蔽を施したカバーを被せ、その外側に別の検体が入ったラックを近づけます。アルミ箔による電磁遮蔽で、ターゲット以外のタグ情報は読み取ることができません。
次に、一括読み取り装置を覆っていたアルミ箔カバーのうち、装置の前後方向のみ電磁遮蔽を取り除いた場合のテストを実施しました。装置横から近づけた別ラックの検体は読み取りを行いませんが、アルミ箔が無い前後部分に近づけると読み取りを行ってしまいます。
この点については、装置前後のラック出し入れ部分に、電磁波を吸収する布を垂らしておくことで、完全に電磁遮蔽された環境を保ちつつ、ラックを出し入れすることが可能となります。
検体着認現場では、このように読み取り装置の周囲に別のラックが散在して置かれるケースが考えられます。本実証実験では、読み取り装置に電磁遮蔽機構を設けることが必要であることを示しています。しかし、その実現方法は極めて簡単で、十分な効果を得られることが実証されました。